理学療法士Kのブログ

博士課程所属の大学院生兼理学療法士が日々の学びや趣味について語るブログです。理学療法の研究やツール、理学療法関連の書籍についての紹介等を行っています。

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クリニカル・クラークシップの問題点について

先日の記事でクリニカル・クラークシップ(診療参加型実習; CCS)についてお話ししました。(日本の理学療法業界では)新しい実習の方法として,指定規則にも記載されているものです。

www.physicaltherapist-k.com

 

しかし,臨床現場で働く理学療法士としてCCSは,従来型実習と比較したときにもちろんいい面もありますが,大きな問題も抱えていると思います。

今回は,CCSの功罪ということで,CCSの問題点についてお話ししたいと思います。

 

CCSの特徴

以前の記事でお話ししたCCSの特徴ですが,以下の3点になります。 

  • 技術単位診療参加システム
  • “見学・模倣・実施”の原則
  • “できること”から実践する

簡単にまとめると,『見学・模倣・実施の流れでできるようになった技術から患者に介入していく』という実習形態になります。

基本的には実習期間は,指導者(CE)の診療にほぼずっと同行して,CEの担当者全員にできるようになった治療介入を行っていくという形式をとります。したがって,従来型実習と異なり,担当患者を持たず,それに伴うレポート作成も無いということになります。

 

CCSの問題点

担当患者を持たないことによる弊害

CCSでは担当患者を持たず,技術単位で担当します。したがって,一人の患者に対して介入していく流れを経験できないということになります。理学療法は評価・治療・再評価の流れの中で,『評価結果をどのように解釈し,そこからどのような治療を選択し,その結果をさらにどのように解釈して次につなげるか』という思考を常に行っていきます。従来型実習では,一人の患者を担当することで,その思考過程をしっかりと学ぶことができました。CCSではCEの言ってしまえば担当患者全員が実習生の担当となるため,どうしてもその流れを十分に学ぶことができないのではないかと思います。

 

症例レポート作成しないことによる弊害

CCSをするうえで最もフォーカスされるのが,レポート作成が無いことです。従来型実習の最も大きな問題点として,レポート作成・添削による指導者・実習生の時間的負担の大きさがありました。それが解決されたのは確かに良いことかもしれません。

しかしながら,症例レポートを作成する事には大きな意義があると思います。症例レポートを作成するということは,患者に対する評価~治療の流れを言語化する作業です。したがって,レポートを作成する過程で,自分の中でその流れをきちんと整理し,理解しなければ言語化はできません。また,レポートとして指導者に提出するということは,自分の考えを他者が理解できる形にするということです。

つまり症例レポート作成とは,患者に対する自分の考え方をきちんと理解・整理し,他者へ分かりやすく伝えるトレーニングとしては非常に優れていると思われます。

 

指導者の能力に対する依存が強い

従来型実習では,実習生1人に対して,スーパーバイザー,ケースバイザーの他,見学に入ったPT等,比較的多くのスタッフが関わります。もちろん,実習あるあるの人によって言っていることが違うという問題点はありますが,ある意味,色々な考え方を持ったPTに接する機会があったということになります。

CCSでは基本的に1日中CEの診療に同行する形をとりますので,他のスタッフと触れる機会はどうしても減ってしまいます。したがって,実習生はCEの考え方の影響をより大きく受けることになります。

実習生を担当するCEにも色々な人がいて,もちろん優秀な方もいるとは思いますが,中にはそうでない方もいます。その分,悪く言えば指導者の当たり外れが従来型実習より激しくなると言えます。指定規則でも臨床実習指導者の要件は厳しくなっていますが,その部分は根本的な解決は難しいと思いますので,実習生は良い指導者に当たることを祈るばかりです。

 

学生の能力差がより強調されやすい

CCSはできることを行うことが原則になります。したがって,例えばある学生はできる項目が20個あるが,ある学生は1個しかないといった状況も発生してしまいます。CCSでは1個しかない学生に対して,1個できるようになったと評価しますが,実習期間にできるようになったことが1個とは,現実的に考えるとちょっと問題です。実習施設がその状況を養成校に伝えたうえで,養成校が合否判定を行います。もしその学生が合格と判断され,社会人としてPTになった時に,8~10週間かけて1つのことしか修得できなかった新人は正直厳しいと言わざるを得ないと思います。

僕の印象として,CCSは加点中心の評価になっているので,同じ合格者でも従来型実習と比較して,実習を終えた学生の能力差は大きくなっているのではと思います。その能力差は,理学療法士の質の幅が大きくなることに直結することを考えると,やはり考えることがあるのではと思います。

 

まとめ

今回は,僕が思うCCSの問題点について挙げました。指導者,学生双方にとって負担の少ない実習を目指すのはもちろん大切なことだと思いますが,それ故に,従来型実習で得られていた大きな財産を失うことにも繋がってしまうのではないかと危惧しています。個人的には,担当患者を持ち,レポート作成は行いながらも,レポート作成だけに注力せず,並行して治療介入をCCS形式で行うのがベストなのではないかと感じています。個人的には教育には時間的負担はある程度はあってしかるべきだと思いますし,それなりに負荷がかかった状況でなければ人間は成長しないと思いますので,過負荷になりすぎないよう調整をしながら,多少は厳しめな実習ができればと思っています。

 

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